女性皇族の結婚─憲法と立憲君主制について

オランダ王宮

 皇女と民間人の結婚を、この度は多くの国民が反対していました。
 いちぶの週刊誌とテレビの情報番組もまた。「秋篠宮家の長女眞子さまは、小室圭さんと、結婚していいものか?」と。
 両人は結局は、意思を通してNYでの新生活へと飛び立ったのですけれど。

 反対の声が大きくあがったことを、下記の記事から、いま一度考えてみたいと思いました。

「王室の結婚」by 小倉孝保 毎日新聞論説委員(2021/10/29)・・抜粋しつつ転載させてもらいます。

──オランダには王位継承者の婚姻を巡り、社会が二分された歴史がある。
 ベアトリクス前女王が、ドイツ外交官と結婚した時には、反独感情から国内で抗議活動が起きた。
 ウィレム・アレクサンダー国王が、アルゼンチン出身の王妃と結婚した際にも、彼女の父に独裁政権で閣僚を務めた経歴があり、結婚に反対する声が少なくなかった。
 前女王、現国王とも、反対を押し切る形で自己決定を優先させ、国民も結果的にそれを尊重した。最後は法によって判断するとの精神が根付いている。

 17世紀に英国で立憲君主制が導入されて以降、この制度を取る国は、民主主義下での王室のあり方に心を砕いてきた。民主化がすすむと王室と国民との距離は縮まる一方、王室の権威は傷つきやすい。そうしたリスクがあっても最終的には法に従うのが立憲君主制である。
王であれ法を超える存在ではない。

 秋篠宮家の長女眞子さんが、民間人の小室圭さんと結婚した。2人がその意思を表明して以降、小室さんの母の金銭問題などを巡り一部メディアは大騒ぎした。結婚に反対する声もあった。
 憲法は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定している。2人が自分たちの意思で決意した結婚である。それに反対することは、皇室を憲法の枠外に置く危険がある。

 かつて天皇陛下の名の下、軍部の暴走を招いた経験を持つ日本人は、憲法に従う「立憲」と君主制を両立させることの大切さ、難しさを知っている。
 共和制の国では最近、権力の世襲がつづいたり、大衆に迎合する指導者によって世論が分断されたりするケースも多い。
 社会を極端に走らせない点で、立憲君主制の長所が見直されても良い時代だ。
 だからこそ安定した象徴天皇制を維持するため、皇室と憲法の関係には一層の注意を払いたい。──

 小倉論説委員は、最近のオランダの様子も書いています。
 オランダは、20年前の2001年に世界にさきがけて同性婚を認めた、そういう国なのですが、そのオランダで先日、ルッテ首相が議会に対して、「王位継承者も同姓と結婚できる」との考えを示したそうです。
 王室メンバーにも法は平等に適用されることを確認した形だと。
 そして小倉論説委員は、次のように記事を結んでします。

──オランダの(現在の)王位継承順位1位、アマリア王女は17歳で、具体的な婚姻話はない。そんな時期に、同性婚の可否について政府が議会に報告する。
 これも立憲君主制のあり方だと私は思う。──

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